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前回の「全4回 ナレッジマネジメントとは?Part3-ナレッジが「蓄積」されない5つの理由」という記事で、ナレッジマネジメントが求められる背景、目的や効果、具体的なステップなどについて説明しました。
そこでも説明した通り、ナレッジマネジメントのステップは、「共有」→「蓄積」→「活用」の3段階で展開していく必要があります。
例えば、営業現場で競合情報に関する有用な情報が朝礼で共有されたとしても、その情報が蓄積されなければその場にいたメンバーの記憶にしか残らず、後に入社してくる人や他支店の人がその情報を活用することはできません。
また、仮にその情報が社内データベース上に蓄積されていたとしても、意図がきちんと伝わらなかったり、あるいはそもそもそのナレッジが存在することに気づかれなければ、ナレッジが有効活用されることはありません。
今回の記事では、3つのステップの中の「活用」に焦点を当てて、社内で共有されたり、蓄積されているナレッジが活用されない、活用しようとしてもうまく活用できないという失敗とその対策をまとめました。
この一連のナレッジマネジメントについての記事をまとめた、「ナレッジマネジメントの傾向と対策」という無料Eブックもダウンロード可能ですので、社内用のご説明などにお役立てください。
ナレッジの活用がされない理由として、組織体制自体に起因する「ルールや文化の問題」と使用しているナレッジマネジメントツールに起因する「ツールの問題」、そして活用するナレッジそのものに起因する「ナレッジの問題」があります。
それぞれ、具体的にどのような失敗理由があるのか見ていきましょう。
ナレッジマネジメントを導入した企業によくある失敗の原因として、システムを導入し、ナレッジをいつでも取り出せる仕組みをつくったのにも関わらず、社内メンバーに問題に直面したときに解決策としてのナレッジを「探しに行く」という発想や習慣がない場合です。
ナレッジが蓄積されていたとしても、それを活用するメンバーがナレッジを取りに行かなくては意味がありません。
まずは、なにか問題や悩みが発生したときには、諦めたりすぐに誰かに聞いたりするのでなく、まずは社内のこの場所に行けば問題解決のためのナレッジがある、自分の悩みが解決される、とメンバーが思える場所を一つ作りましょう。
または、ツールによって状況に適したナレッジがレコメンドされたり、マネージャーなどがチームに対してレコメンドする、という手法もおすすめです。
そもそもナレッジを探さない受動的な姿勢の原因の一つはこれです。
自身の課題感が強くない問題に対してわざわざよりよい解決方法を探したり、そもそも解決せずに放置するということは一般的に珍しくなく、ナレッジが活用されない原因となります。
最初はメンバーの業務や成績に直結しているような重要なナレッジに絞って運用を開始して、まずはナレッジを取りに行くという習慣を定着させる、というのも一つの手です。
メンバーが問題解決のためにナレッジを探し、該当するナレッジを利用していたとしても、そのナレッジの意味を理解せずに、盲目的に利用していた場合、それは活用できているとは言えません。
例えば、営業のノウハウの一つに営業トークをそのままテキストに起こしたもの(トークスクリプト)があります。しかし、トークスクリプトをそのまま読んだとしても、皆が同じ成果を出せるわけではありません。
話しているときの表情や声質はテキストには書かれていませんし、また相手によって内容を柔軟に変えていかなくてはいけません。そして、なぜその順序でその内容を話す必要があるのか、といったナレッジの裏にある意味や目的の理解が不可欠です。
盲目的にナレッジに従った結果、いつまでも成果が出ない、というようなことがないようにナレッジの裏にある考え方や目的などもセットでナレッジにするのがよいでしょう。
ナレッジが多く蓄積されてくると、今度は数多くのナレッジの中からどれを活用すべきか判断できなくなる、という問題が発生します。
この問題に対しては、ツールの機能である程度対処が可能です。
たとえば、どのナレッジが多く使われているのか、といったことが分かるような数字が評価として表示されていたり、評価の高いナレッジ順に表示されていたり、あるいは他の利用者のコメントが閲覧できる、などといった機能が必要になります。
検索性の悪いナレッジマネジメントツールは、目的のナレッジが見つかりづらく、次第に活用されなくなります。
ナレッジの種類や数、内容などによって検索のしやすさは変わりますし、またシステムのUIや設計によっても左右されます。自社の状況に合わせたシステムを選びましょう。
前項と似ていますが、どのナレッジが自身に関係のある内容なのかを瞬時に判断できなければ、一つ一つの中身を確認してなければならず、数が増えてくるとナレッジを探すこと自体が大きなコストになってしまいます。
蓄積されているナレッジのフォーマットや表記が統一されていないとそれだけでナレッジが探しづらくなります。
また、視認性も悪くなり、内容を理解するのに無駄なコストが発生してしまいます。はじめからフォーマットや表記ルールは統一しましょう。
目的のナレッジを見つけても、それが本当に問題解決に役立つのわからない、むしろ役に立たなないのでは?と思えてしまうことがあります。
そのような印象を受けるのは、もちろん内容が伴っていない可能性もありますが、例えば「デザイン」であったり、「誰」が持っていたノウハウなのか、といったことがナレッジの信頼性に影響を与えます。
①「誰が提唱しているノウハウか?」(本人の影響力)、②「実際に結果を出しているノウハウなのか?」(実績)、この2点が分かりづらいとナレッジの信頼性が足りず、ツール上で閲覧はされたとしても実行に移されないということになってしまいます。
デザインや作成者の情報といった定性的な情報、そしてノウハウによって得られた結果という定量的な情報、この2点で信頼性を担保する仕組みをつくりましょう。
ナレッジが活用されない原因の一つに、「具体性がなく伝わらない」という問題がアリアmす。
ナレッジを共有する際に普段のメモ帳と同じ感覚で、自分の言葉で残してしまうと、細かい行間の意味や表現の意図などが他のメンバーに伝わらず、具体的な行動につながらなくなってしまいます。
ナレッジを説明する際に抽象度の高い表現をしてしまうと、閲覧者が具体的な行動に落とし込むのが難しく、活用できなくなってしまいます。
また、逆に具体的な行動手順ばかりで意義や目的の説明が欠けていると、閲覧者はただその通りになぞるだけで、自分の状況に合わせた工夫や修正をすることができません。それでは行動が定着もこともありません。
ナレッジのなかで行動の意義や目的について触れていない場合も活用されづらくなってしまいます。
他のメンバーがこのナレッジを活用する場合はどのよう場面でどのように使うのか、どんな注意点があるのかといった閲覧者への配慮がなされていないと、使いづらいナレッジになってしまいますので注意しましょう。
ナレッジマネジメントに関する当連載記事の内容がすべてまとまったホワイトペーパーです。失敗を回避するポイントや導入の手順などが分かりやすくまとまっていますので、ぜひ社内での説明用などにもご活用ください。