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「ナレッジマネジメント」とは、企業内外に散在する知識の集積を図り、全社的に共有・活用することで組織としての競争力を向上させる経営手法です。
簡単に言えば、各メンバーの知識やノウハウを整理し、可視化することで社内の誰もが情報にアクセスできる仕組みを作り、全社で活かせるようにしましょう、ということです。
昨今、ナレッジマネジメント導入の必要性が高まっています。その背景には次のような理由が考えられます。
1.人材の流動性が高まっているため、社内にノウハウが蓄積されにくくなりつつある
2.ハイパフォーマンス人材の確保が困難になってきており、既存人材の成長が不可欠になりつつある
3.個人ではなくチームの時代。組織としての生産性を最大限に発揮することが求められている
4.事業活動を行う上で日々積みあがる情報が増えてきており、資産として活用した場合の有効性が増してきている
5.働き方改革などの就業環境の変化により、限られた就業時間の中で生産性を高めていく必要が生まれてきている
また、6つ目の理由として、以下の理由もあげられます。
6.新型コロナウイルスによる外出自粛要請によって多くのスタッフが「テレワーク」という働き方になったときに、口頭でぱっと聞いたりするようなコミュニケーションが難しくなり、基本的な情報は自分で調べられる体制が必要になっている。
ナレッジマネジメントの導入によってどのような効果が期待できるのでしょうか。
大きく分けると次の3つの効果があると考えられます。
営業トークや資料の質の向上、他社事例研究など
社内問い合わせへのFAQ作成、顧客対応の工数削減など
ナレッジの積極的な共有とさらなる改善など
社員の頭の中に埋もれていたナレッジを全社で共有し、有効活用できるようになると、一人一人が参考にできるノウハウの量が増加し、個人の成長を促します。また、既に答えの定まっている情報は1ヵ所で集中して管理されるために業務の効率化、工数削減へとつながります。
こうした共有の習慣が定着することで、互いに支え合い、成長していく企業風土の醸成が実現されることでしょう。
ナレッジマネジメントと一概に言ってもその過程は3つのステップに分類することができます。それは、「共有」「蓄積」「活用」の3つのステップです。
個人や会社が保有する有用なナレッジをチームに分かりやすく説明し、他メンバーに理解できる形で共有します。
メンバーがチームに共有したナレッジをデータとして社内のシステムに保管し、後日同様のケースが発生した際に対応や活用ができるように情報資産として蓄積します。
共有されたナレッジを自らの業務に落とし込み、より質の高いアウトプットを生むために有効活用します。
3つの基本ステップはナレッジマネジメントを健全に運用していくうえでいずれも欠かすことはできません。
例えば、営業現場で競合情報に関する有用な情報が朝礼で共有されたとしても、その情報が蓄積されなければその場にいたメンバーの記憶にしか残らず、後に入社してくる人や他支店の人がその情報を活用することはできません。
また、仮にその情報が社内データベース上に蓄積されていたとしても、意図がきちんと伝わらなかったり、あるいはそもそもそのナレッジが存在することに気づかれなければ、ナレッジが有効活用されることはありません。
ナレッジマネジメントは多くの従業員にとって、やらなくても別段困るものではありません。共有する側にとっては既に知っていることをあえて残す理由は無く、また活用する側も既存の業務が回っていればわざわざ新しい情報を取りに行く必要はありません。
そうではなく、ナレッジを共有することで無駄な作業を無くし、組織をより良くしていくという意思決定こそがナレッジマネジメントだと言えます。
したがって、なぜナレッジマネジメントが必要なのか、その目的を関係者のなかで最初にはっきりさせておく必要があるといえるでしょう。
まずは担当部署と担当者を決めましょう。ナレッジマネジメントは多くの関係者を巻き込む、一つのプロジェクトです。
ナレッジマネジメントの対象範囲をよく知っている人や、関係者とコミュニケーションを取れる人を担当者にアサインしましょう。
どんな種類のナレッジを共有するのか、いつ、だれが共有するのか。
蓄積ルールや命名ルール、フォルダ分けやタグ分類のルールなどをあらかじめ決めておき、日常業務のなかに自然に落とし込むことが重要だと言えるでしょう。
はじめのうちはうまくいかないことも多いはずです。
導入初期では少数のメンバーで小さく始め、改善を回しながらナレッジマネジメントに関するナレッジをためていきましょう。全社的に展開するのはそのあとでも遅くないでしょう。
ナレッジマネジメントの導入では普段からコミュニケーションの取れているチーム、組織の方が成功率が高くなるようです。
仲間に共有しやすい空気、コメントを残しやすい空気がすでに培われていることが必要なのでしょう。
また、どのように共有すればちゃんと相手に伝わるのか、そうした匙加減も日常的な会話のあるチームほどうまいようです。
共有することの副次的な効果として、情報を公開することによるメンバー間での信頼関係構築といった側面があります。
信頼関係を構築し、互いに役立つナレッジを共有していく中でともに成長していく文化を作っていことが重要なのです。
それでも導入時は多くの失敗があり、膨大な改善点が見つかることでしょう。
思うようにメンバーが動いてくれないかもしれません。どんなシステムや制度を導入する場合でも同じですが、はじめのうちはとにかく改善を回し動き続けるしかありません。
そのための覚悟を決める必要があります。
最後に、使い勝手の良いナレッジマネジメントのためのシステムを活用するのもポイントです。
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ナレッジマネジメントに関する当連載記事の内容がすべてまとまったホワイトペーパーです。
失敗を回避するポイントや導入の手順などが分かりやすくまとまっていますので、ぜひ社内での説明用などにもご活用ください。